(57)「第七のラッパ」(その2)
ヨハネが見ていると、第7の天使が出てきてラッパを吹いた。
「さて、第七の天使がラッパを吹いた。…(中略)・・・天にある神の神殿が開かれて、その神殿の中にある契約の箱が見え、稲妻、様々な音、地震が起こり、大粒の雹が降った。」(新約聖書「ヨハネの黙示録」第11章15~19節)
天にある神の神殿が開かれたときに出現する契約の箱は聖櫃「アーク」で、金色をしたこの箱を神輿のように担いで無数の敵がうごめく最前線に持ち出すと、敵が全滅したと、旧約聖書に記されている。旧約時代の最終兵器ともいえる聖櫃が、この時再び姿を現して、猛烈な轟音と炎を発しながら敵の軍隊を完膚なきまでに撃ち砕くのだ。
「七人の祭司は、それぞれ雄羊の角笛を携えて神の箱を先導しなさい。七日目には、町を七周し、祭司たちは角笛を吹き鳴らしなさい。彼らが雄羊の角笛を長く吹き鳴らし、その音があなたたちの耳に達したら、民は皆、鬨の声をあげなさい。町の城壁は崩れ落ちるから、民は、それぞれ、その場所から突入しなさい。」(旧約聖書「ヨシュア記」第6章4~5節)
「主の契約の箱が陣営に到着すると、イスラエルの全軍が大歓声をあげたので、地がどよめいた・・・・(中略)・・・ペリシテ軍は、神がイスラエル軍の陣営に来たと言い合い、恐れて言った。「大変だ。このようなことはついぞなかったことだ。大変なことになった。あの強力な神の手から我々を救える者があろうか。あの神は荒れ野で様々な災いを与えてエジプトを撃った神だ。」(旧約聖書「サムエル記 上」第4章5~8節)
契約の聖櫃「アーク」は天の神殿に置かれているとあるが、預言者エレミヤの頃までは、ソロモン神殿に置かれていたことが判明している。その後、記録が途絶えることから、エレミヤが運び去ったと考えられる。事実、「聖書外典」にはそのように記されている。
「そこに到着したエレミヤは、人の住むことのできる洞窟を見つけ、そこに幕屋と契約の箱と香壇を運び込み、入り口をふさいだ。」(「聖書外典」「マカバイ記 二」第2章4節)
「人の住むことのできる洞窟」とある以上、エレミヤはそこに人を置いたに違いない。アークを運ぶことができるのはレビ族だけなので、そこに残ったのはレビ族の血をひく者であるはずである。そして、ある時期に、再び別の場所へ運び出したのである。それがどこかは未だに謎のままである。
飛鳥氏の知り合いに、叔父が「伊勢神宮」の記録係だった人物がいる。彼の叔父は、突如として「伊勢神宮」から逃げ出してしまうのだが、その理由は、職務で隠された地下宮に入り、天照大神の御神体を見たからであるという。
「日本には絶対にあってはならない物が置かれてあり、それを見てしまった」
そこで何が起きたかわからないが、その時の余りの恐怖から、若かった叔父は「伊勢神宮」を飛び出し、それが何だったのか、生涯口を割らなかったという。神罰を恐れたからである。
天照大神の御神体とは「三種の神器」だが、その中の八咫鏡は「御船代」に納められている。その船をヘブライ語で「アーク」という。どこかで聞いた名である。ソロモン神殿に置かれていたアークには、「モーセの十戒石板」だけが入っていたと記録に残されている。
「箱の中には石の板二枚のほか何もなかった。この石の板は、主がエジプトの地から出たイスラエル人と契約を結ばれたとき、ホレブでモーセがそこに納めたものである。」(旧約聖書「列王記 上」第8章9節)
八咫鏡が本当に鏡かどうか、カッバーラの世界では額面通りには受け取らない。
三種の神器の「草薙剣」にしても、それが剣なのかどうかは疑問がある。何しろ、壇ノ浦の戦いで船から海に投げ落とされても、海岸に流れ着いて「熱田神宮」に返還されているのだ。鉄製であれば、海底深く沈んだままで、海岸に流れ着く可能性はゼロである。草薙剣が木製で、それも杖のように長い棒だとするならば、伝えられていることに合点がいく。もしそうならば、失われたイスラエルの「三種の神器」の1つ、「アロンの杖」の可能性が出てくる。
イスラエルの神器は「十戒石板」「アロンの杖」「マナの壺」で、今でも行方不明のままだ。
「熱田神宮」では、草薙剣は倭建命が伊勢の国で亡くなる際、妃から預かったまま動いていないとしている。だが、それは神話に過ぎない。一方の壇之浦の戦いは史実なのだ。
八咫鏡も同じで額面通りには受け取れない。それに鏡はどこにも1枚とは書かれていないから、合わせ鏡、すなわち「二枚鏡」かもしれないのだ。そうなると。八咫鏡は十戒石板の可能性が出てくる。
十戒石板はヘブライ語で彫られた戒めの書で、人を十戒と照らし合わせて本当の姿を確定するためのものだとされ、それは閻魔大王の鏡に匹敵する。戦前、ホーリネス教会の中田重治牧師が「鏡にヘブライ語が書かれている」と言い残したともいわれ、それが事実であれば、八咫鏡=十戒石板の可能性が高い。
アークが日本に隠されているならば、終末の日にエルサレムに出現するアークは、「伊勢神宮」から、日本のレビ族が担ぎ出すことになる。神官は一子相伝で同じ血族が代々続いている。そして、レビ族は神殿職以外に就かない。このことから、日本のレビ族とは「伊勢神宮」の神官だと考えられるのである。日本から運び出されたアークが、果たしてハルマゲドンの火付け役になるのだろうか?