(19)「旧オスマン帝国」対「旧ペルシャ帝国」の戦い
オスマンの旧領土はスンニ派、ペルシャの旧領土はシーア派と色分けされている。ただし、どこの部族が新生帝国の王族となるのか、2つの文化圏の境界をどうするのか、その主導権争いが起こっている。中近東アラブは部族社会であり、部族社会は力がモノを言う。実際に戦ってボスを決めない限り、騒乱が収まらない。
このイスラム再編からの再統一の動きは、各部族の主導権争いと同時にイスラエル、サウジアラビア、トルコの解体へと向かっている。むしろ、この3国の解体の成果としての主導権争いとも言えるのである。
アメリカ=「闇の支配者」の意向を受けて中近東エリアを管理してきたのは、「パーレビ」時代のイランである。そのイランが1980年、イラン革命で反米化すると、その後はイスラエルとサウジアラビアに「エージェント」の役割が移った。どちらにせよ、アメリカ=「闇の支配者」の代理人が現場を仕切り、アメリカとその背後にいる「闇の支配者」の命じられるままエネルギー政策に協力してきた。
イスラエルと、サウジアラビアは、エルサレムとメッカと言う「聖地」を押さえ、中近東屈指の軍事力と資金力で他のイスラム国家を力で従えてきた。ここで知ってほしいのは、イスラエルもサウジアラビアもトップは、全て国際ハザールマフィアと言う点である。歴代の首相、歴代の王様はユダヤ教徒でも無ければイスラム教徒でもなく、サタン(ルシフェル)=悪魔崇拝をするハザール人なのである。特にイスラム圏で憎しみを買っているのがサウジアラビアである。サウジ王家は聖地メッカのみならず莫大な石油利権をアメリカからプレゼントされ、莫大なオイルマネーでアラブの盟主に君臨してきた。サウジ王家、アラブ最大の建設会社一族のビンラーディン家、そして石油利権のブッシュ家の関係は深いのである。
サウジ崩壊は秒読みの段階に入っている。2015年8月、サウジは6600億円の国債を発行した。又サウジのアブドゥル王子が麻薬所持の容疑でイエメン空港で逮捕されている。軍事的にもイラン、イエメンが中心になって包囲網を築き上げており、サウジ崩壊は時間の問題となっている。
イスラエルも瀬戸際まで追い詰められている。イスラエルの守護者はペンタゴンであったが、そのペンタゴンが国際ハザールマフィアと全面戦争に突入した為、ペンタゴンはイスラエルと袂を分かつことになる。そのイスラエルに手を差し伸べているのがロシアのプーチン大統領なのである。
冷戦後、旧ソ連領内のユダヤ教徒がイスラエルへ移住した。もともとイスラエル人は、帝政ロシアのウクライナにいたスラブ系移民が多い。既に4割がロシア系なのである。ロシアからの移民が増えたこともあり、イスラエルでは「ユダヤ人」よりも「イスラエル人」としてのアイデンティティが高まり、国際ハザールマフィアによってでっち上げられてきた「洗脳」から覚めて、ヒクソスによって奴隷にされ、利用されてきた自らの歴史を直視するようになっている。いわば、イスラエル人の手で「ハザールマフィアの中東基地イスラエル」を解体、パレスチナ人を含めたイスラエル人の国家に再編する動きが出てきており、プーチンが支援している。
トルコは、オスマン復活を目指して暗躍している。オスマン復活を餌にハザールマフィアに協力しているのである。2015年11月、トルコ軍機によるロシア機追撃事件が起こった。これをきっかけにオスマン復活を企むトルコとロシアは全面戦争へと向かっている。
これはプーチンによる対ハザールマフィアという側面だけでなくもう一つ大きな要因がある。「聖地奪還」である。
トルコのエルドアン大統領がオスマン帝国復活を狙ってハザールマフィアと結託している。オスマントルコの旧領土となるサウジアラビア、イスラエル、シリアなどを勢力下に置こうとしている。その一方で、ロシアがトルコと敵対しているのは、石油利権を持つシリアへの支援だけが目的ではない。ロシアの国内事情が複雑に絡んでいるのである。そうでなければ、トルコと敵対する事は無かった。それが聖地奪還である。
冷戦崩壊後、混乱するロシア国民を救済してきたのはロシア正教である。ロシア正教の場合、聖地とは「コンスタンティノープル」なのである。ロシア正教の悲願が「コンスタンティノープル奪還」である。バチカンに相当する本拠地はコンスタンティノープル、今のイスタンブールに総主教庁があった。しかし、ビザンツ帝国は1453年、オスマン帝国によって滅ばされる。その結果、正教会の関係者はロシアへと逃げて行った。その経緯もあって、ロシア正教会は自分たちこそが東方正教会の「正統」と考えているのだ。バチカンのサン・ピエトロ大聖堂がカトリックの総本山とすれば、「聖ソフィア聖堂」は東方正教会の総本山である。しかも、東ローマ帝国黄金期を作ったユニスティアス帝が、バチカンを超える教会として皇帝個人が寄進した「正教の魂」と言っていい。
十字軍にとって聖地奪還が「エルサレム」だとすれば、東方正教会にとっての聖地奪還は、「聖ソフィア聖堂」であり、コンスタンティノープル、つまりイスタンブールなのである。
プーチンの支援基盤であるロシア正教会は、是が非でもイスタンブールを押さえて聖ソフィア聖堂を奪還したいのである。それでプーチンがトルコとの全面対決を決断したのである。2016年2月12日、ローマ教皇フランシスコとロシア正教のキリル総主教がハバナで会談した。この時期に東西教会のトップが会談したのは、ロシア軍とアメリカ軍の軍事同盟の仲介であった。いずれにせよ、聖地奪還も中東情勢を混乱させている大きな要因である。