(15)英米で太平洋と大西洋を統括する構造
15世紀末、アメリカ大陸がコロンブスによって発見されて以降、大西洋は一気に世界の表舞台に躍り出る。16世紀、スペインが新大陸征服の為、大西洋を横断し、17~18世紀、新大陸で「英仏植民地戦争(第2次英仏百年戦争)」が勃発して、旧大陸ヨーロッパでも覇権を競った結果、イギリスが新大陸で優位に立った。その結果、イギリスは大西洋を制覇し、「三角貿易」を展開して、巨万の富を得る時代が到来する。三角貿易と言えば、「砂糖」「銃」「奴隷」を指すが、「大西洋三角貿易」と言うと、「ヨーロッパ」「西アフリカ」「西インド諸島」の3領域を指す。三点それぞれに特定の海流が流れ、イギリスから見た場合、見事なまで一方交通になっていた。
最初の三角形の一点が「カナリア海流(イギリス→西アフリカ)コース」で,繊維製品とラム酒と武器を運ぶルートだった。
次の一点が「南赤道海流(西アフリカ→西インド諸島)コース」で、黒い積み荷と呼ばれる黒人奴隷を大量に運んだ。
最後の一点が「メキシコ湾流・北大西洋海流(西インド諸島→イギリス)コース」で、白い積み荷と呼ばれた砂糖と綿花をイギリスに向けて運んだ。
17世紀以降、イギリスが発祥となる紅茶の習慣が砂糖の需要を押し上げ、インド諸島とブラジル北東部の開発が急がれた。これら地域の圧倒的労働力不足から、大量の奴隷が必要となった。そこでイギリスから出航した船は、カナリア海流で西アフリカへ繊維製品、ラム酒、武器を運び、それら商品と交換に奴隷を確保して、南赤道海流で西インド諸島へ、ブラジル海流でブラジル南東部へ向かい、奴隷と交換で大量の砂糖を獲得し、メキシコ湾流と北大西洋海流でイギリス本国へ戻ったのである。
奴隷の一部は、アメリカ南部にも輸出され、黒人たちは綿花のプランテーションで一生働かされた。その綿花がイギリスの織物工場に運ばれ、産業革命の基盤となった。また、イギリスは、ヨーロッパ、インド、中国(清国)の三角貿易も行った。「茶」「アヘン」「綿織物」の三角貿易である。清からイギリスへ茶を運び、イギリスからインドへ綿織物を運び、インドから清へ銀とアヘンを運び、イギリスは莫大な富を得たのである。
そんな頃、イギリスと旧大陸で、白人(アシュケナジー系ユダヤ)のロスチャイルド家が台頭し、銀行業、鉄道、植民地戦争の兵員をイギリスに貸し出す傭兵業などでヨーロッパ随一の大金持ちになった。
ロスチャイルド家は、「日露戦争」の戦費調達で、日本銀行副総裁だった高橋是清がイギリスとアメリカに赴き、日本公債を発行することと関係する。イギリスでは500万ポンドの日本公債を発行したが、残りの500万ポンドが調達できない状態に陥った。この頃の日本は、国家予算の半分以上は軍事費と言う状況だった。その時に手を差し出したのが、「クーン・ローブ商会」のジェイコブ・ヘンリー・シフだった。シフはロスチャイルド家の一員だった。
ロスチャイルド家はイギリス政府と一心同体だった。ロスチャイルド家は、ロシアを日本と戦わせ弱体化させ、その隙に乗じて乗っ取るつもりだった。ロスチャイルド家は日本に対し、天文学的な戦費を貸し付け、関連企業の武器を買わせ、ロシアを叩いた後、日本から巨額の利子を吸い取る算段だった。結果として、日本財政は火の車となり、さらなる戦争に向かわざるを得なくなる。領土拡大による戦略にのめり込んでいった。
ロシアは、ユダヤ系レーニンが仕掛けた「ロシア革命」の暴力でロマノフ王朝が崩壊する。結局、日露戦争の真の勝利者は、ロスチャイルド家となった。現在、ロシアのプーチン大統領は、ユダヤ系財閥と徹底抗戦する唯一の指導者になっている。
徳川幕府を倒す資金を援助したのはイギリスだった。正確にはロスチャイルド家だった。イギリスのロスチャイルド家とフランスのロスチャイルド家が二手に分かれ、薩長倒幕勢力と江戸幕府の両方を資金と武器で支援し、両者を戦わせて、どちらが勝っても支配権と利益を手に入れようとした。
長崎に居を構えた「マセソン商会」のトーマス・グラバーを介した資金も、イギリスのロスチャイルド家から出たものである。事実、グラバーは坂本龍馬を使って薩長を結び付け、両藩に支援して幕府を転覆させている。特にグラバーの協力でイギリスに密航留学した長州藩の5人を「マセソン・ボーイズ」といい、莫大な留学費を負担したのもグラバーだった。彼らは帰国後、内閣の父で初代総理大臣の伊藤博文、外交の父で初代外務大臣の井上薫、鉄道の父で鉄道庁長官の井上勝、造幣の父で造幣局局長の遠藤謹助、法学の父で法制局長の山尾康三となる。
グラバーはロスチャイルド家の代理人であり、維新後、グラバーは三菱財閥の岩崎弥太郎の下で働き、明治政府から「勲二等旭日重光章」を授与されている。かくしてイギリスは、「独立戦争」でアメリカに敗北し、世界最大の覇権国の地位をアメリカに譲ったが、裏からアメリカを牛耳ることになる。それがロックフェラーである。
とはいえ、イギリスは大西洋を支配し続けた。つまり、ロスチャイルド家が大西洋を牛耳ったということである。大西洋航路の花形だった「タイタニック号」は1912年に沈没事故を起こすが、莫大な保険金がロスチャイルド家に転がり込んだ。
アメリカの日本再占領を語るうえで、イギリスの存在を無視できないのは、ロスチャイルド家が大西洋を支配するように、アメリカのロックフェラー家が太平洋を支配している構造だからである。この構造を知らずして「TPP]を語っても何の意味も無い。TPPの裏には密約があった。