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「リッチスタン」とは何か(6)

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(6)アメリカの日本再占領② 日米地位協定の原型

 浦賀に上陸したペリーは、アメリカ大統領の書簡を手渡したが、幕府は翌年の回答を約束するのが精一杯だった。ペリーは一時日本を去るが、上海で約束の年明けまで待機していた。これは明らかな日本狙いである。一点集中砲火で、他国のような甘い判断をしなかった。

 かくして、他の艦を加えた総勢7隻の大艦隊で江戸湾に戻ってきた。そこから全艦の砲弾を江戸にぶちこめば、江戸は一夜にして消滅したはずである。徳川幕府は圧倒的な脅しに敗れ、横浜に上陸したペリーと「日米和親条約」を締結する。その際、下田と箱館の2港の開港と領事の駐在を約束した。これは鎖国の終焉を意味し、アメリカに対し、幕府は最恵国待遇の付与を約束した。その後、アメリカから総領事ハリスが来日し、幕府との間で「日米修好通商条約」を結んだが、これは日本に関税の自主権がない不平等条約で、アメリカの領事に裁判権も認める内容だった。

 これが今に続く、「日米地位協定」の始まりで、アメリカは一度有利に決めたら内容は絶対に手放さない。しかし、アメリカの最大の目的は、日本から金を略奪することであった。条約第5条で、日米貨幣の金銀等価交換が定められたが、当時の日本の銀貨「1分銀」は、幕府の信用による「表記貨幣」で、日本の金銀比価は金1に対する銀4・65で、外国の相場の金1対銀15・3と比べ銀の価値が高かった。幕府は「下田条約」の交渉で、「金貨基準」の貨幣交換を主張したが、ハリスは「銀貨基準」の交換を主張し、幕府を押し切ったのである。結果、金のアメリカへの流出が止まらず、インフレーションによる国内経済の混乱が日本を叩きのめした。慌てた幕府は、貿易専用通過「安政二朱銀」を発行し、金の流出を止めようとしたが、アメリカは条約違反を盾に国際法を持ち出し、金の合法的略奪を止めなかった。これにより、倒幕気運が全国的に高まり、国内の金銀比価が国際水準となるまでアメリカの一人勝ちが続いたのである。

 アメリカが日本開国に成功した理由は、他国より「情報を得る力」「分析力」「実行力」に長けていたからである。一方の、日本は「情報を得る力」は有っても分析力、実行力が欠落していた。その後、アメリカはハワイを謀略で手に入れ、ハワイ王朝を消滅させた。アメリカにとって、日本を征服するのは、ハワイ王朝を倒し、太平洋の臍を確立してからだった。

 アメリカは、明治維新後の日本が、富国強兵でロシアに勝利した姿を見ていたが、日本の勝利は首の皮一枚を残した勝利にすぎなかった。当時のロシアは、レーニンの革命運動が続発し、日本との戦争にかまけている状況ではなかった。一方の日本は、戦争を継続する予算が無かった。その中で、アメリカが助け舟を出して仲介の労を取った。このままではロシアに日本が奪われてしまうからであった。そこで「ポーツマス講和」で領土と賠償金を求める日本をなだめ、戦争継続気運が高まりかねないロシアを説得し、「樺太割譲」で日本とロシアを説得した。その後、アメリカは、日本軍を注視し、中国で暴走する関東軍の様子を見定めていた。そして絶好の機会が訪れる。「満州事変」である。

 1931年、南満州鉄道が爆破される「柳条湖事件」が発生し、関東軍が清朝最後の皇帝・溥儀を担ぎ出し、満州国を建国した。それが国際法上の正当か否かを決定する「リットン調査団」が派遣されたが、日本に不利な結果が下され、日本は「国際連盟」を脱退することになる。

 1937年の「日中戦争」を機に、アメリカは戦争継続に不可欠な「石油」「鉄くず」の輸出を制限する「ABCD包囲網」で日本に圧力を加えた。最後にハル・ノートを突き付けた。つまり、アメリカは日本にパンチを打たせる目的で、先に日本に蹴りを入れたのである。

 東京裁判の席で、インドのパール判事は、アメリカが日本に送ったのと同一文書を他国に送れば、非力なモナコ公国やルクセンブルク公国でさえ、必ずアメリカに対して武力を持って立ち上がるだろう」と語った。しかし、アメリカは「事後法」を盾に日本を平和の罪で裁き、「リメンバー・パールハーバー」の言葉を世界に席巻させた。かくして日本は世界の悪役となり、アメリカは世界を救ったヒーローとなった。

 そして現在、邪魔になった「憲法9条」を自民党と公明党によって骨抜きにし、TPPを絡めながら、中曽根元首相の「日本不沈空母論」の約束を果たせるため、ついに日本の再占領に乗り出そうとしていた。

 その矢先、ドナルド・トランプが登場し、TPPが水泡と化したのである。これで、世界は混乱のカオス状態に陥り、日本は屋根に登ったのはいいが、その梯子を外される事態に陥ったのである。先が全く読めなくなったのである。この状態は日本とって吉となるのだろうか?


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