(5)なぜ、サンダース現象が起きたのか?
民主党でヒラリーとしぶとく競争していたバーニー・サンダースはバーモント州上院議員で社会主義者とまで名乗っている男である。サンダースには若者達(民主党のリベラル派の学生)を中心にした強固な支持が集まっている。ヒラリーが嫌いな人たちが、サンダースを大いに盛り上げてきた。サンダースは10数州で勝っている。何故、サンダースがこんなに強いのか?
それは、どうしてもヒラリーには勝たせたくないという動きがあるからである。本当のことを言うと、アメリカの下層中流は白人の女たちに、「自分の子供が戦争に徴兵されていくのが嫌だ」と言う戦争反対の切実な心理が強くあるからである。「ヒラリーが大統領になったら、アメリカは戦争をする」と母親たちは強く予感している。この気持が子供たちに伝わって、それがヒラリーを忌避してサンダースに強い支持が表れている。
ヒラリーは「軸足をアジアに移す」と言う論文を外交専門誌(フォーリン・アフェアーズ)に発表した。これは「日本や韓国や台湾、フィリピン、ベトナムを嗾けて、その後ろからアメリカが指揮して物質の補給をやるから、お前たちが中国と戦え」と言うことである。
それでも民主党はヒラリーが勝つ。なぜなら、民主党には一般代議員のほかに特別代議員と言う制度になっていて、これが712人もいる。彼らは投票で選ばれない。初めから決まっている特権的な人々である。このうち469人がヒラリー支持を明らかにしている。特別代議員は、自分の好きな候補に投票できる。だから、ヒラリーには最初から469人分の票が上積みされていた。サンダースを支持表明しているのは29人だった。だから、サンダースは初めからヒラリーには勝てない。6月になって、サンダースが急にトランプ陣営と話し合う動きが出ている。トランプは「不動産屋の中小企業の親父」である。だから「私は借金王だから金利は低い方がいい。大銀行のやっている巨額の金融バクチ(クレディット・デリバテイブ)は、アメリカ国民のためにならない」とはっきり言った。この点で今後のニューヨークの大銀行の動きを抑える法律を作るとサンダースと合意したのである。
2015年10月22日に「ベンガジ事件」を究明する特別調査委員会が開かれた。この召喚、喚問をヒラリーは押し切った。「ベンガジ事件」とは、リビアの第2都市ベンガジで、クリス・スティーブンス米リビア大使が殺害された事件である。(2011年10月20日) このクリス・スティーブンス大使は国防長官だったヒラリーの直属の外交官であり、CIAの人殺し部隊と言う特殊部隊の責任者でもあった。スティーブンス大使はその前年に、自分が直接指揮してカダフィ大佐を惨殺した。リビアの独裁者カダフィ大佐殺しの最高責任者はヒラリーである。この暗殺部隊はリビア人ではなく、アフガニスタン人である。彼らは自国の首都カブールに英雄として凱旋しようとしたが、カブール空港に着陸しようとして「タリバーンの攻撃があって」輸送機ごと爆殺された。つまり、口封じで殺されたのである。ヒラリーはこのような恐ろしいことをやってきた女なのである。このクリス・スティーブンス大使に、今のISと同様な人間たちが襲いかかった。実態はISである。狂気の集団がスティーブンスを火事の炎で窒息させた後、路上で死体を引きずり回した。その映像がネットに流れて、それを自宅で見たヒラリーがゲロを吐いて倒れた。そして3か月後の2012年末には、国務長官を辞めた。年末には軽い脳出血を起こしてワシントンで病院に入院した。
あの時、何が起こっていたのか? アメリカ政府は、カダフィ政権を崩壊させた後、奪い取ったリビア軍の大量の兵器をイスラム勢力(ただしアメリカの言うことを聞く武装勢力)に引き渡す秘密協定を結んだ。この軍事密約の武器取引を、殺害されたスティーブンス大使が国務長官のヒラリーに逐一判断を仰ぎながら実行していたのである。この時の2人の通信内容が「ヒラリー・メール」なのである。スティーブンスは自分を殺しに来た者達を、自分が十分に手名付けていたと勘違いしたのである。飼い犬に手をかまれたのである。
スティーブンスとヒラリーとの交信記録の流出が今騒がれている「ヒラリーの公文書メール問題」である。この謀略政治の実行の証拠が公然と表に出たら、ヒラリーにとって命とりである。国家行為として相当の犯罪行為の証拠が流出したのである。カダフィを惨殺して(2011年10月20日)リビアの国家資金をすべて、アメリカの特殊部隊が奪い取った。この資金は200億ドルぐらいであるが、今のISの凶暴な7万人の傭兵部隊の軍事資金になったのである。同時期にエドワード・スノーデン事件が起きている。(2013年5月20日) CIA職員だったスノーデンがNSA(国家安全保障局)の国家秘密情報を何十万件もダウンロードして香港に逃げた。この中にヒラリー・メールも含まれていた。このヒラリーの通信文書の中に「カダフィを殺してしまいなさい」とか「集めた金の処理をしなさい」と言う恐ろしい文書が沢山あった。これらが世界中の大手新聞社に送られて大騒ぎになった。FBI長官も「ヒラリー公文書メール」の事で犯罪捜査として追及している。しかし、下院のベンガジ委員会はヒラリーを呼びつけたが、この時に隠されたクーデターが米政界で実行されたようである。(政治学用語で宮廷革命と言う) 国民には知らせないで夜の軍隊が動く。政府が乗っ取られる。ヒラリーを喚問、召喚していたトレイ・ガウディ委員長が突然、発言停止状態になったのである。「それ以上、政治の裏側の真実を暴いたら、議員たちと言えども許さない」と言う恐ろしい力が、アメリカ政治に襲いかかった。それでヒラリーは逃げ延びたのである。